住宅購入時の資金贈与に関する非課税制度と利用上の注意点
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宮川敦子
新井智美
トータルマネーコンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員、コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

住宅を購入する際の自己資金として、親もしくは祖父母から資金援助を受ける方もおられるでしょう。また、その際には非課税の特例制度を利用できることも広く知られているところです。ただし、贈与における非課税制度は他にもあることから、それらの内容をしっかりと理解し、そのときに最適な非課税制度を利用することが大切です。そこで本稿では、贈与税の仕組みや、数ある非課税制度の内容、さらには贈与税対策にはどのようなものがあるのかについてもあわせて解説します。

目次

  1. 贈与税の仕組み
    1. 暦年贈与
    2. 相続時精算課税制度
    3. 贈与税の計算上の注意
  2. 贈与税対策について
    1. 「暦年贈与」を利用した生前贈与
    2. 相続開始前3年間の贈与については相続税の対象に
  3. 住宅購入における資金贈与に関する非課税制度
    1. 要件および非課税限度額
  4. 住宅取得等資金贈与の非課税制度の注意点
    1. 贈与した日および住宅購入契約日
    2. 非課税になるのは購入時だけではない
  5. 贈与税の今後の動向に注目

贈与税の仕組み

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贈与税とは、個人間の財産の受け渡しにより課税されるものです。法人から贈与を受けた際は贈与税の対象とはならず、所得税の対象となります。

贈与税の課税制度は大きく「暦年贈与」そして「相続時精算課税制度」の2つがあり、どちらかを選択することができます。

ただし、一度「相続時精算課税制度」を選択した場合は、その後の贈与において「暦年贈与」を選択することはできません。また、「相続時精算課税制度」を利用する場合には、一定の要件を満たす必要があります。

暦年贈与

1年間(毎年1月1日〜12月31日まで)に受けた贈与の額に対して課税されます。

基礎控除額(110万円)が設けられていることから、受けた贈与のうち110万円を超える部分について課税されることとなります。

贈与税の税率は、課税対象となる贈与財産額が大きくなるにしたがって、税率も高くなるという累進税率が採用されています。

【一般贈与財産用】(一般税率)

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下
税 率 10% 15% 20% 30%
控除額 - 10万円以下 25万円以下 65万円以下
基礎控除後の課税価格 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税 率 40% 45% 50% 55%
控除額 125万円以下 175万円以下 250万円以下 400万円以下

(引用:国税庁 贈与税の計算と税率(暦年課税)

さらに、その財産の贈与者が直系尊属であるか否か、また、受贈者の年齢が20歳以上であるかどうかで、適用される税率が異なる点にも注意が必要です。

現在の税率では、贈与者が直系尊属であり、かつ受贈者の年齢が20歳以上の場合においては、それ以外の場合と比べて適用される税率が低くなっており、さらに控除額も大きくなっているという特徴があります。

相続時精算課税制度

贈与者が60歳以上の父母もしくは祖父母であり、また、受贈者が20歳以上である場合に選択できる制度です。ただし、以下の要件を満たす必要があります。

・贈与者は受贈者からみた直系尊属であること
・贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の期間内に、管轄の税務署に対し「相続時精算課税選択届出書」を提出すること(提出義務は受贈者にあります)

また、この制度で非課税となる限度額は2,500万円となっており、それを超えた場合は、超えた部分について一律20%が課税される点に注意が必要です。

贈与税の計算上の注意

贈与税額については、受贈者(贈与を受けた人)を基準にして計算されます。

例えば、父母そして祖父母から100万円ずつ合計200万円の資金援助を受けた場合、200万円から基礎控除額の110万円を差し引いた90万円が贈与税の対象となります。この部分については誤解のないようにしておきましょう。

(参考:国税庁 贈与税がかかる場合

贈与税対策について

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贈与税対策として多く利用されるのが「暦年贈与」を利用した「生前贈与」です。しかし、生前贈与についても仕組みをよく理解しておかないと、思ったような対策効果が得られない場合があります。

「暦年贈与」を利用した生前贈与

毎年、暦年贈与の基礎控除額である110万円までの金額を贈与する方法です。ただし、毎年一定額の贈与を行っていると、定期贈与とみなされ贈与税の課税対象となります。

暦年贈与を利用する際は、贈与の都度、贈与者と受贈者の間で贈与契約書を交わしておくことをおすすめします。

また、できれば毎年の贈与額および贈与時期など異なるものにしておくなどの工夫も大切です。

相続開始前3年間の贈与については相続税の対象に

暦年贈与で生前贈与を行っていたとしても、相続開始前3年間の贈与額については相続税の課税価額に算入されます。

計算上は贈与税額控除の対象となりますが、控除される贈与税額についてはその人の相続税額が限度となることから、もしも、贈与税額が相続税額を上回ることとなったとしても、その上回る部分についての還付を受けることはできません。

ただし、相続時精算課税制度を選択している場合においては、精算課税の対象となる財産について課税される贈与税額について、その額が相続税額を上回った場合、申告することで還付を受けることができます。

(参考:国税庁 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

住宅購入における資金贈与に関する非課税制度

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住宅購入の際に直系尊属から自己資金の援助を受けた場合においては、要件を満たすことで一定額までの贈与税が非課税となります。

要件および非課税限度額

この制度の適用を受けるためには、まず贈与者が受贈者から見て直系尊属である必要があります。また、取得する住宅や、受贈者においても以下の要件を満たす必要があります。

・取得する住宅の購入契約日が2021年12月31日までであること
・贈与を受けた年の1月1日の時点で受贈者の年齢が20歳以上であること
・贈与を受けた年の受贈者の前年合計所得金額が2,000万円以下であること
・贈与を受けた年の翌年の12月31日までにその住宅に住んでいること

非課税限度額は、その住宅が省エネ等住宅かそうでないかによって異なります。ちなみに省エネ等住宅の場合は1,500万円、それ以外の場合は1,000万円が限度となります。

(参考:国税庁 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

住宅取得等資金贈与の非課税制度の注意点

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一番多いのは申告漏れです。

この制度を受けるためには、非課税限度額に収まる場合であったとしても、管轄の税務署に対して、贈与を受けた年の翌年の2月1日〜3月15日の期間内に贈与税の申告書と必要書類を合わせて提出する必要があります。

暦年贈与の場合は非課税であれば申告不要であることから、この制度についても非課税なら申告不要と捉えがちですが、そうではありませんので注意してください。

贈与した日および住宅購入契約日

まず、贈与税の課税時期は「贈与した日」です。そして、非課税限度額については、その住宅購入契約日が基となります。

贈与した日と住宅購入契約締結日にずれが生じた場合は、適用される非課税限度額が異なる可能性がある点に注意が必要です。

非課税になるのは購入時だけではない

住宅取得等資金贈与の非課税は、購入の際だけではなく、自分が所有し居住している住宅に対してリフォームを行った際にも適用されます。

その際の要件については、以下のとおりです。

・リフォーム後の住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下で、そのうちの2分の1以上が居住用となっていること
・リフォームにかかった費用が100万円以上であること
・増改築等工事証明書が発行されていること

(参考:国税庁 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について

贈与税の今後の動向に注目

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2021年の税制改正大綱(自由民主党・公明党)によると、「資産移転時期の選択における中立性」という観点から、今後、現在の暦年贈与および相続時精算課税制度についてその在り方を見直すなどといった検討を進めるとしています。

それから1年後、そろそろ2022年の税制改正が発表される時期が近づいてきています。今回の要望には具体的な内容は組み入れられていませんでしたが、今後の検討の進み具合によっては具体的な改正内容が発表されるのもそんなに遠い先の話ではないかもしれません。

贈与税および相続税について、今後どのような改正が行われるのか。それらの動向を早めに把握するとともに、また、改正が行われた際にはその変更点についても十分に理解を深めておく必要があるといえるでしょう。

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